瘤(こぶ)はなぜできる?


まず静脈の存在場所について理解しておきましょう。
下肢全体の静脈血の
85%を運搬する深部静脈は筋肉内を通過します。筋膜の外は厚めの深筋膜で覆われています。つまり回りは筋と筋膜とでしっかりと保護され、血管への圧迫力も強く、またそれに打ち勝つための血管壁の厚みや弾力性を有しているといえます。深部静脈の血管壁の平滑筋や膠原線維はしっかりとしており、静脈弁も弾力性に富み、めったなことでは破損しません。
さて表在静脈である
伏在静脈15%の静脈血を運搬していますが、厚めの深筋膜と薄めの浅筋膜との間に存在しています。このスペース(コンパートメント)の血管壁への圧迫力は中程度であり、血管側の構造も中程度の強さといえます。しかし一端伏在静脈の弁不全が生ずると、構造上深部静脈より弱い伏在静脈側に血液が逆流することになります。この還流障害こそがさまざまな症状(だるい、むくみ、痛い、ひきつる、こむらがえり、痙攣、皮膚ただれ等)を起こしてくることになるのです。但し中程度の圧迫力がこのコンパートメントにはあるため、伏在静脈本幹には瘤ができることは少ないといえます。
瘤(こぶ)として皮下に認められる静脈瘤は伏在静脈の分枝に多くできます。分枝は浅筋膜と皮膚との間の皮下脂肪層に存在しています。このスペースはふわふわで柔らかく、いくらでも伸び縮みができる場所といえます。分枝の血管構造は一番弱く薄く、逆流圧が加わればたちどころに延びきってしまい、さらに延長して行き場がなくなり蛇行し渦を巻いてしまいます。もはや血流はなくなり、血栓(血の塊)ができ、血管壁は硬い革様の団子状態になってしまいます。時々血栓の破片が肺等へ流れ飛びますと、肺塞栓等の重篤な状態をおこすこともありますが、一般的には肺塞栓は深部静脈の血栓遊離によることがほとんどといわれています。
また
網状静脈瘤は皮下の浅いところの血管拡張であり、さらにクモの巣状静脈瘤は真皮内の1mm以内のものをいい、いづれも美容上の問題が主となります。

伏在静脈瘤 側枝静脈瘤 網目状静脈瘤 クモの巣状静脈瘤