大脳辺縁系は意識を介して働く脳であり、哺乳動物が本能的に行動をする脳でもあります。欲求により行動を開始し、満足すると自動的に抑制がかかり欲望を調節しています。まずは生きるために食べること、子孫を残すべく求愛活動、身内を守ろうとする集団行動、恐れ・逃避・満足・哀しみ等の感情、成功・失敗例からの条件学習等が営まれています。たくましく生きる哺乳動物脳といえます。

 大脳辺縁系は身内に対して情愛深く、人情味があり、面倒見がよいといえます。しかし、欲が絡むだけに、抑制が効かぬ時もあり、幼少時からの訓練・躾が要といえます。



1、飲食行動は個体維持に必要であり、まず食べるための行動を開始します。でも野生動物では必要量でストップがかかります。しかし人間は口のかわいさに負け食べ過ぎて肥満・高脂血症等を引き起こします。腹八分目を心がけて下さい。

2、求愛行為は種族保存の本能からくる辺縁皮質での行動です。異性を求め、気をひいたり、関係を良好に維持するには何が必要か、子孫を残すにはいつがよいか・・・等、生身の生活上の駆け引きや努力工夫が繰り広げられます。満たされると安心し、落ち着いて他のことが運べるようになります。が相手のあることであり、努力工夫をおこたると孤独感、情緒不安、セクハラ等につながります。



3、辺縁皮質の意欲的行動力はたくましく生きようという闘争本能によります。車のエンジンのように前進力があります。弱肉強食の法則は自然界の掟として自らを守り、他を攻撃し、感情的な行動に移行しやすい側面があります。利己的で短絡的な情動中枢との関わり合いによります。辺縁皮質の生活エネルギーが強く出過ぎれば貪欲となり、満たされないと怒りや攻撃となります。少なければ無欲となり、恐れや逃避の形をとってきます。

 しかし、欲望は経済力・行動力・学習欲・社会欲等の原動力でもあり、やる気となり、生きる力の出発点にもなります。

 欲という煩悩を生きる力に転換して、目的を達成しようとする意欲的な取り組みこそが生活の原点にもなりましょう。



4、辺縁皮質の欲望抑制機構の存在により野生動物は必要以上には食べません。ブレーキ役が備わっているからです。人間は欲望が極めて強いため意識して行き過ぎを制御する必要があります。幼少時から条件反射として躾をつけた方がより有効です。犬の餌のおあづけ訓練と同じです。よく「ぶち切れる」として少年犯罪が目立つようになりましたが、感情の抑制ができ、忍耐もでき、すみませんと素直にいえる子供にしつける事が大切です。

 日本全体でもエコノミックアニマルと称して経済大国を押し進めれば他国との軋轢が生じます。必要分だけ獲得をした上で礼節・節度をわきまえること、足るを知ること(知足)で自他共に心がおだやかになれるものです。


5、辺縁皮質の群居本能により動物は群をなし自分たちの集団を守ろうとします。同族集団に所属することで安心感があるからです。親が子を思い、家族愛が生まれ、また職場の同僚同志がチームワークを組んで互いに心配りをすることで親睦が生まれてきます。隣人を思いやる気づかい、情の深さ、協調性、みんな仲良しは家族・仕事場・町内等の小集団の活動が円滑に行える基礎となります。

 同族意識が強くなり過ぎると、身内の利益が優先し、他集団との競合や争いが生じてきます。民族間・国家間・宗教間でも同様です。辺縁皮質の群居本能レベルでものを考えるのではなく、大脳皮質での叡智で平和解決しなければなりません。報復、仕返し、怒りは動物的次元です。